ご案内
損害保険業界では契約時に「契約のしおり」を添付して商品の理解を深めるよう努力している。
それでも家計保険分野では保険約款は読まれないベストセラーともいわれ、販売側の商品の説明は十分ではなく、阪神・淡路大震災時に見られたような多くのトラブルが起きている。
一方、自由化は消費者にも自己責任を求めており、中長期的には保険教育の問題でもあるが、当面の消費者対応の第一歩は商品内容である標準普通保険約款を平易にすることであろう。
自由化・規制緩和によって保険経営は単なる「販売会社」としてではなく「保険会社」としての専門性と経験の蓄積を評価されることになり、また当面の課題として経営の効率化によって高事業費率体質から脱却し、さらに自己資本の充実によって担保力を増強し、他業態との競争力を高めることを迫られている。
自由化・規制緩和は商品設計の自由度を増大し、新商品開発のチャンスである。
既存保険商品を革新し、あるいは新保険商品を開発し、低付加率の商品販売によって経営の合理化に資することも必要である。
つまり、高事業費率体質から脱却するには契約単位当たりの保険料ロットを大きくする商品の開発であり、付加率の少ない商品の開発である。
保険料ロットを大きくすることによって相対的に付加保険料部分を引き下げ、合理化に寄与する。
また保険料ロットを大きくすることは代理店・ブローカーの販売意欲を高めることになろう。
保険契約単価の引上げは保険契約の長期化、担保危険の総合化、各保険種目契約の名寄せ、あるいは保険種目を横断した商品の開発、さらには生命保険との提携商品等々である。
一方、○○化によって担保危険を細分化した商品の開発も考えられる。
火災保険は火災危険による損害を補償するものであったが、火災危険の低下による保険料率の引下げを回避するため、落雷・爆発・風水災の危険を担保に加えてきた。
そのため極めて安定していた火災保険の損害率は台風一九号によって戦後唯一大幅に上昇した。
火災危険は低下傾向にあり、また安定しているため、火災危険のみ担保の極めて安い保険料の火災保険商品も考えられる。
わが国の損害保険業では価格決定・保険料率算定は算定会種目については経営の外部の算定会で行われ、損害保険会社では個別に保険料率を算定する必要はほとんどなかった。
本来、企業経営においては商品価格の決定は極めて重要であり、自由化によって保険経営は価格決定権を漸く手中に取り入れることになり、保険経営の原点に戻ったことになる。
保険料率は現在は算定会料率と業法認可料率である。
算定会料率は算定会によって算出され、タリフ化されてきた。
また業法認可料率は保険種目としては種類は多く、算定会料率に依拠するもの、あるいは貨物海上保険等の自由度の高い種目もある。
しかし保険料の大部分は算定会料率に依拠してきた。
算定会料率の廃止によって当面はすべて業法認可料率に移行する。
カルテル料率の廃止は市場原理によって、不当に損害率の低い.付加率の高い保険種目の料率は低下するため、販売手法の多様化は避けられない。
特に保険料ロットの小さい保険商品は自由化のメリットを生かし、通信販売の導入・直販社員による募集活動・継続契約の更改手続きの合理化等々販売手法の効率化による対応を必要としている。
本来は自己の販売する商品の価格・保険料率は自己で決定するという保険料率の算定は保険会社の基本業務である。
世界最大の保険引受組織であるロイズ、また欧米の大手の保険会社は料率を独自に算定するか、算出機構のデータを利用して独自に算定する能力を持っている。
一方、戦後、わが国では戦前行われていた保険料率の協定等は「他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引上げ」の行為として独占禁止法に抵触することになり、これを回避するため保険料率算出機構として算定会は設立されている。
料率算出機構は家計保険分野の保険商品のように保険対象の多い、リスクの均一化しているものは、個別会社ごとに算出するよりは、共同でデータを大量に集積し、保険の技術的数理的な基礎となる大数の法則を、より有効に働かせ、より精徹な純率を算出できる。
共同算出機構のメリットは、個別な損害統計を集積して、多くの資料に基づいて純率を算出することによって、料率の安定性・信頼性を高めることであり、また保険会社にとっては個別の料率算出機構を外部に移行する一種のアウトソーシング(外部への業務委託)であり、料率算出・算定にかかわる個別のシステムの負担を軽減し、経営の合理化に資している。
保険料(率)を構成する純保険料(率)の特徴は、第一に事故発生確率と平均損害額から算出される予測値であり、リスクに対応している。
保険(危険)原価は保険販売時は予測値であり、確定するのは保険期間終了後、支払保険金の確定した後である。
保険原価の事後確定性といわれている。
一般の製造業の製造原価のように事前に確定しているものではない。
第二は支払保険金充当部分に相当する保険原価の部分は経営の内部でコントロールできるものではなく、自然現象・社会環境等々の外部の危険要因によって決定される。
第三は保険原価は一般商品の価格のように需要供給の関係で決定されるものではなく、基本的には事故発生率および損害額のリスクによって決まるものである。
一方、契約の増大は大数の法則をより有効に働かせ、事故発生の予測値と実際の発生率を近似させ、より安定化することにはなる。
しかし、契約・需要の増大によって保険原価は低下することはなく、また保険の供給は担保力による制約は受けるが、資源的要因によって制約されることもない・価格としての保険料、営業保険料の付加保険料部分は需要の増大による規模の利益も働き、この部分の引下げによって営業保険料は引き下げられる。
需給関係に関連する部分である。
営業保険料は付加保険料部分において価格競争は可能であり、純保険料部分では競争の余地はほとんどない。
保険原価を下回る保険料では保険金支払いを不可能にし、経営を破綻させる。
保険料率は単純に低ければ良いというものではなく、最低限でも保険原価に事業コストを加えたものでなければならない。
保険商品は紙と人によって、あるいは情報と人によって生産される無形な商品であり、商品の供給を制約する要因は生産面ではない。
供給は容易なため競争の激化によって、事後に確定する保険原価部分を過小に評価し、価格競争に陥りやすい。
保険原価部分を含んだ価格引下げ競争は必要な保険金支払ファンドを枯渇させ、倒産することになる。
損害保険の歴史は競争と協調の繰り返しの歴史であった。
過去には経営の未熟さ、事後確定性の認識の不足によって、保険原価部分を下回るような営業保険料率による競争も行われた。
したがって営業保険料は一般商品とは異なり、単に安ければよいというものではない。
支払保険金充当分は確保きれ、適正な事業費・利益を賄うものでなければならない。
料率競争は純保険料部分は与件として付加保険料部分の競争、つまり効率化の競争に限定される。
わが国では戦後半世紀近く算定会料率を利用してきた。
算定会は純保険料率については十分なデータを蓄積・保有しており、精度の高い純率を提供できる。
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