大学留学の興味深さ!

innovationsというのは「新しいものをとり入れること」だ。 日本語には「新風を吹き込む」という誠に爽やかな表現がある。
これを用いない手はあるまい。 日本でなじんだ用語を選ぶ言葉の選択としては、「アフリカン・アメリカンポップミュージック」というのも引っ掛かりがある。
何でも縮めた表現が好きな日本では、「アフロ・アメリカン」といった方がすっきりする。 しかし、問題は、このケースでも「アフロ・アメリカン」としていいのかどうか。
疑問に思ったら、音楽事典や類書に当たることだ。 すると、ブラック・ミュージックに造詣の深い音楽評論家・n氏が「アフロ・アメリカン」という表現を使っているのを某書でみつけた。
お墨付きだ。 かみ砕いた表現を心がけよそして、とりわけ“直訳調"の硬さを感じさせるのが「方向性に永遠に影響を与える」という部分だ。
だいたい、抽象的な漢語が三つも続くと、たいていの読者は目肢がしてしまうものである。 「方向性を決定づけた」くらいの、かみ砕いた表現が望ましい。
〔原文〕Withhismulti-racial,mixed-sexband,theFamilyStone,thesinger,
multi-instrumentalist,songwriter,andproducerusheredintheeraoftheself,
containedbandbyfreeingthemusicfromitsvocalists-withbackup-bandmold,
andthepoppingbassstyleoforiginalmemberLarryGrahamsetthepulseforwhatbecameknownasfunk
〔仮訳〕多様な人種、性別のメンバーのザ・ファミリストーン、そしてシンガーとマルチ・インストルメンタリスト、ソングライタ一、プロデューサーのsで構成されるこのバンドは、この時代の標準であったボーカリストと単なるパックバンドという型を破った先駆者である。 それに加えてオリジナルメンバーのRの突出したベーススタイルもまたファンクというジャンルとして後に大いに影響を与えることになる。
冒頭の一文に続く文。 「多様な…このバンド…」の部分は、知識のない人にはまったくわからない。

シンガーやソングライターとは別にザ・ファミリストーンやプロデューサーのSがいるのだろうか?原文を見ると、「いろいろな人種からなり女性も交えたバンド『ザ・ファミリストーン』を従え、シンガーにしてマルチ奏者であり、作詩作曲やプロデユースも手がけたSは」ということのようである。 Sが吹き込んだ新風について語っているのだから、Sが主語になるのは当然だ。
訳例では、新風を吹き込んだのが、ザ・ファミリストーンにスライを加えた謎のバンドのように思える。 この方面に知識があり事実を理解していると、かえって、落とし穴にはまってしまうのかもしれない。
・「多様な性別」って何だ?「多様な人種、性別の」というのは、いかにもおかしい。 バクテリアの中にはいくつもの性を持つものがあるらしいが、これは人間の話である。
男と女しかない。 ここは訳しにくいところなのだが、意味としては「黒人だけでも男性だけでもない。
という意味で画期的な)バンドということだろう。 したがって「白人も女性も交えたバンド」と訳すのが適当なところ。
場合によっては省略も可能述語部分で一部省略しているのは、人によって判断が分かれるかもしれない。 この場合省略されでも一応、文全体からニュアンスは伝わっている。
theself-containedbandをひとことで簡潔に表現するのが難しかったからだろう。 意味としては、「何でも自力でこなすバンド」といったところなのだが、これはどうもいただけない。

思い切って省くか、うまい言い方を工夫するか、どちらかだろう。 長いセンテンスは切る原文はワンセンテンスなのだが、訳文は2つの文に切ってある。
文章は短い方がわかりやすい。 原文が長い場合は訳文をいくつかの文に切ることも時に必要。
なお、「突出したベーススタイル」というのは意味不明。 「弾けるようなベースさばき」くらいに訳したいものだ。
Sly'sgenrecrossingmixofsoulandrocknotonlyinfiuencedfuturestarsliketheJacksonFive,GeorgeClinton'sParliament-Funkadelic,theBar-Kays,theOhioPlayers,RickJames,andPrincebutalsochangedthecourseforsuchalreadyestablishedartistsastheTemptationsandStevieWonder〔仮訳〕SのソウルとロックをミックスL-tこスタイルはJ、JcのN、ん、O、R、pいった後のアーテイスト達に影響を与えただけでく、すでに当時成功していたtやsなどにも影響を与えた。 アーチスト名のオンパレードだが、最初に述べたように、これは監修者がつくので、表記上の細かい問題に気を取られる必要はない。
例えば、Jのグループ名に定冠詞がついているが、これはず、をつけた方がいいのかどうか、と思い悩んで調査に時間を割かなくともよい(特定のグループ名に定冠詞をつけたりつけなかったりするのは、どうやら音楽界の慣習のようだ。 )言葉の置き換えが許されるところもあるalreadyestablishedartistsには、「既に音楽スタイルを確立していた」という意味と、「名声を不動のものにしていた」という意味がともに込められている。
が、そのまま併記して訳しては、いかにも冗長だ。 ここは、後者の意味を「有名アーチストたち」と置き換えて、臨機応変にうまく処理したいところ。
述部で同じ言葉を繰り返さないnotonlyinfluencedbutalsochanged??のところ、changed以下が訳しにくいため、ややもすると、「……に影響を与えたばかりでなく、〜の方向性にも影響を与えた」と訳してしまいがち。 そういう意味だが、日本語では、特に述部で同じ言葉を繰り返すと稚拙な印象を与える。
配慮が必要。 Sの絶頂期はわずか4年間足らずで、その後の彼はクリエーティブ活動の方向性も定まらず、作る曲にも深さがなかった。

彼の人気はスターダムを手中にした直後に下り坂となり、大成功に終わった1969年のウァドストックへの出演を境に、仕事に遅れてきたり時にはすっぽかして姿を現さないというようなことが続いた。 このあたりは、集中して日本語表現に問題がある。
解釈の簡単なところは、逆に要注意だ。 ・似て非なるもの、補足と蛇足文章を読みやすくするために、原文に説明的な言葉を加えることは許されると述べた。
しかし、この訳例では、それが裏目に出ている。 例えば、「その後の彼はクリエーティプ活動の方向性も定まらず、作る曲にも深さがなかった」の部分。
かなり原文と変えてきている。 原文通りに訳せば、「その後の創作活動は散発的で深みを欠くようになっていった」となるところ。
こちらの方がずっと読みやすい。 基本は、短くすっきりだ。
・日本語の用例も辞書で調べよ「彼の人気はスターダムを手中にした直後に下り坂となり」としたところは、原文がワンセンテンスなのに、あえて次の文に接続した理由がわからない。 しかも、原文通りに素直に訳せば、「頂点をきわめた直後、下り坂に向かったのである」。
こちらの方がわかりやすい。 また、あえて捻り出した「スターダムを手中にした」というフレーズが、そもそも日本語として慣用的ではない。
「スターダムにのし上がった」あるいは「スターの座を手中にした」のどちらかだろう。 言葉の係り方がわかる語順を選ぶ「大成功に終わった1969年のウッドストックへの出演を境に」という部分も誤解を招く。

大成功だったのはウッドストックなのか、スライなのか、これでは不明。 言葉の係り方がはっきりわかるような語順を選ぶのも、日本語表現のイロハである。
原文を読めば、大成功したのはスライ、とわかる。 1969年、ウッドストックに出演して大成功をおさめてからというもの」としたいところだ。
原文に誤記がある場合は訳注をつけるなお、テキストに用いた原文には、一部、誤記かと疑われる箇所があった。 スライの生年月日、出生地についての表記。
関連書籍によっては別の生年月日、出生地を記していたものがあったからである。 こういう場合は、自分が調べた範囲のことをメモして編集者に渡せばよい。
最終的にどう処理するかは編集者次第である。 Hismusicturnedfromthejoyouscelebrationof1968'sDancetotheMusic"tothedarkcynicismof1971'sThere'saRiotGoin'OnanalbumcontainingtheFamilyAffair"Themanwhohadwantedtotakeeveryonehighertookhimselfsohighoncocainethathewasneverabletocomedownforlong,andwhenhedid,heappearedaburned-outshadowofhisformerself〔仮訳〕音楽的にも、1968年の“ダンス・トゥ・ザ・ミュージック"と聞き比べると、1971年のアルバム“ファミリアフェア"に収録されている“暴動"には暗いシニシズムが満ちあふれでいる。
自分の音楽によって聞く者をハイにしてきたスライには、自分自身をハイにするためにコカインが必要だったのだろうか。

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